So-net無料ブログ作成

18.奥多摩 高水三山と本仁田山~入門の山、萩、蕎麦 [私の山歩き]

 奥多摩編も最後になったが、高水三山(たなみずさんざん、793m=岩茸石山)と本仁田山(ほにたやま、1224m)を忘れてはいけないな。奥多摩の入門として両方とも紹介されることが多い。青梅線で終点の奥多摩駅まで行かずに、手前の駅から登り始めることができるし、それなりの変化を楽しめる。

 高水三山は青梅線の軍畑(いくさばた)で下りて、しばらくは川沿いのアスファルト道を歩いて高源寺というお寺さんを過ぎて、堰堤を越えてから山道が始まる。杉の植林帯を登って行く。途中ベンチが置かれている幅の広いまっすぐな上り道がある。尾根道に出るとすぐに常福院という真言宗の古刹がある。この裏側に付けられた道を登ると高水山である。

 高水山から急降下して岩茸石山に登り返すことになる。もう20年ほども前だが、ここで数人の男性に呼び止められて、「この先で倒れた人がいます。急ごしらえの担架を作るのでベルトを貸してください」と頼まれた。すぐにベルトを抜いて渡した。それも含めて数本のベルトを2本の木の枝にわたして担架代わりにし、その人たちは心筋梗塞らしい急病人を常福院まで下ろして行った。われわれが岩茸石山で休んでいると、ヘリコプターの音が聞こえてきたので、病院まで搬送されたらしいとわかった。

 驚いたのは、病人を運んで行った人たちがわれわれのところまで戻ってきて、そのベルトを返してくれたことだ。倒れた急病人と同じパーティの人たちとばかり思っていたが、病人は単独行で、男性たちはただ通りかかっただけだった。私が病人の顔色を見たときは「たぶん危ないな」と思ったが、その人たちが言うには「わかりません。大丈夫だといいんですが」。翌日の新聞やテレビのニュースを見てもそれらしい記事は出ていなかったので、たぶん大事には至らなかったものと思われる。あの人たちは人命を救ったのである。あわてず的確な対応をするのは、そう誰にもできることではない。

 さて、この岩茸石山山頂にはきれいな萩の群落がある。初秋の萩の花はなんともいえず風情のあるものである。この山頂から黒山を経て棒ノ折まで2時間半ほどのコースがある。あんまり人は歩かないので、静かな雰囲気を堪能できる。余裕のあるときはおすすめだ。高水三山のあとひとつの山は惣岳山だ。きれいな植林の間のきれいな道を歩く。惣岳山には青渭(あおい)神社奥の院というお宮さんがある。ふもとの沢井に里宮があるそうだ。このすぐ下に真名井の井戸という水場が祀ってある。青渭神は水神様のようだ。

 ここから御岳駅まで下るのだが1時間とちょっとかかる。御岳駅の裏側というか山側に玉川屋という老舗のそば屋さんがある。風情のある茅葺きの店で、そばとビールで疲れた脚を休めるには最適だ。ただし、休日などは満員で、とても落ち着いてゆっくりしていられないというのが難点ではあるが。

 青梅線を御岳駅からさらに3駅奥多摩駅方面に上ると鳩ノ巣駅に着く。ここは川苔山から下ってきたときに着いた駅だ。ここから舗装された道を大根ノ山ノ神という祠あるところまで登ると、川苔山への分岐に出る。ここを左に登る。ここらあたりもいつの間にか白けた林道が付いた。その林道を左に分けてぐんぐん登るとコブタカ山という壁のような頂に出る。ここまでくればあとは快適な山歩きが楽しめる。

 いつだったか会社の仲間と積雪期に登ったことがある。誰も歩いていない真っ白な雪道をラッセルしながら登るのは実に気持ちが良かった。ただ、バテて倒れそうになった人間が一人出てあわててしまったが。積雪がなければいつ歩いてもほんとに気持ちのいい散歩が楽しめる。山頂からはきれいな富士山が望める。

 下りは急坂を転げるように下りる。安寺沢という多摩川の支流に出たら、あとは奥多摩駅に向けてアスファルト道をひたすら下りるだけである。

17.奥多摩 棒ノ折山〜沢登り、温泉、雹 [私の山歩き]

 奥多摩で何度も通った山と言えば、棒ノ折(969m 棒ノ嶺)を外すわけにはいかない。変な名前だが、例によって弘法大師にまつわる由来のある名前らしい。青梅線の川井駅から奥茶屋まであるいてキャンプ場を抜けてワサビ田を縫って登りにかかるコースを最初選んだが、このコースは面白くない。キャンプ場までやたら歩くし、ワサビ田には有刺鉄線が巡らしてあったりで、あんまり気分よくない。頂上下の登り道も杉林の中を階段状の道がついていて、興趣をそがれる。
 
 ただし! 獅子口屋(ししぐちや)のわさび漬けは安くてうまい。高尾山口の駅の売店などで売っているが、行くたびにいくつも買っている。実サンショウもキャラブキもご飯のおかずに最適(でも、昔に比べると値段の割に量が少なくなってきた)。いつか、ここのワサビ田から川井駅に歩いている途中で、獅子口屋の工場を見つけて、「ここにあったのか!」と大発見した気分になった。

 棒ノ折に登るなら、埼玉県側の名栗湖畔から白谷沢を登るコースが面白いことに気づいて、ここから何度も登ることになった。複数人のグループで西武線飯能駅からタクシーを利用して名栗湖までいき、さらに有間ダム(みごとなロックフィルダム)を渡り、湖畔をさかのぼって白谷沢登山口で下りる。料金はかさむが4人で割り勘すればそんなに負担にはならない。タクシードライバーもとても喜ぶ。

 白谷沢に付けられた登山道を渓流にそってスリルも味わいながら登る。ほとんど沢登り気分が味わえる。1時間20分ほどで沢登りは終わり、いつのころからか付けられたスーパー林道にパカッと出る。これだ。腹が立つのは。林業のみならず生活や観光にも使えるということで、あちこちでこのスーパー林道というのができた。本当に役立つのなら多少の自然破壊も許容できるが、そうは思えない。作っただけで、山腹に付けられた白々しい道だけが長々とくねっているだけなのだ。もちろん利用している人はいるだろうから決めつけはよくないが、見る限りは無駄な公共投資としか思えないのだ。

 さて、その白けた林道を渡ると、急な上り道にかかる。登りきると岩茸石という大きな岩のある尾根に出る。この岩は登れる。あるとき、ちょっと失礼してこの岩陰で小用を足していたら、若い女性のグループが通りかかってあたふたしたことがあった。その節は失礼しました。

 この岩から森の中の上り道に入る。急な階段状の坂を登ると、権次入峠(ごんじりとうげ)という平場に出る。ベンチもあって休憩ができる。ここを右へ折れて25分ほどで棒ノ折山の山頂に着く。この道は緩やかで幅の広い上り道なのだが、土留めのために階段状に道が作ってあり、これがけっこう脚にくる。山頂も広々とした広場になっている。野球だってできそうだ。昔は茅を刈る茅場だったそうだ。山頂にはテーブルとベンチがいくつかあり、ゆっくりと宴会もできる。天気がよければ北方に上州や日光の山々も望めて、まことに気持ちがいい。

 さて下りは先ほどの権次入峠から右に入り黒山から岩茸石山へと縦走し、惣岳山から御岳駅へと下りるコースがとても充実している。静かな山歩きが堪能できるが、われわれは横着して、権次入峠からさらに岩茸石に戻って、右に下って名栗温泉へと向かうのが常だった。ここの大松閣という老舗の温泉宿の日帰り湯に入るのだ。湯上がりはむろんビールで乾杯だ。これがあるから山歩きはやめられない。

 あるとき、これは初夏だったが、ここからバス停に向かう途中で凄まじい雹(ひょう)に降られたことがある。直径1〜2センチくらいの雹がバラバラバラと、走って駆け込んだバス停の屋根をたたく。あれはこわかった。

 

 


 

16.奥多摩 大岳山〜シロヤシオ、森の中、わき水 [私の山歩き]

 大岳山(1266m)は、特徴のある山の形をしており、中央線の電車の中からなどすぐにわかる。山頂ばぷっくり盛り上がっており、まわりの山からその大きな頭を突き出している。いくつかのコースがあるが、一番なじみがあるのは青梅線御岳駅からバスで滝本までいき、ケーブルカーで御岳山まで登って、宿坊が並ぶ参道を歩いて、御嶽神社にお参りしてから登山道に入る(お参りしなくても手前から登山道に入れるが)。この両側に土産物屋が並ぶ参道がけっこうきついのである。

 歩いてすぐの左側に長尾平と呼ぶ広場みたいなスポットがある。さらにすぐ左側に下る道があって、ロックガーデンと呼ぶ沢沿いの谷間の道に出る。ここを歩いてもいいし、谷間の上の道を歩いてもいい。さらに右側の尾根道の方へ登れば、奥の院から鍋割山へ辿れる。この道は人があまり通らないのでとても静かだ。この三つの道がこの先の芥場峠で合流する。この辺から道は急になり、崖にそった道も続くようになる。やがて左手に大岳山荘の屋根が見えてくる。

 2人の子供たちが小さかった頃、奥多摩駅から鋸尾根を伝って、鋸山から大岳山に登り、この大岳山荘に家族4人で1泊したことがある。自炊だがけっこう人も多かった。今はどうだろうか?(どうも営業してないらしい)。 大岳山荘のすぐそばに大岳神社があり、ここから山頂まで、急な岩場の登りがある。ここが遠くから見える特徴的な出っ張りである。20分ほどで山頂に出る。晴れていれば西の空に富士山がくっきりと見えて、じつにきれいだ。また、山頂付近の森には初夏には優雅で気品のあるアカヤシオ、シロヤシオが咲いている。

 山頂から西側のほうへ下りれば鋸山方面への道だ。登ってきた道を下りて、大岳山荘から山頂を左回りにまいて、富士見台へと森の中を歩く。この道が気に入っていることは前にも述べた。とくに初夏や初秋の雨降りのときなどがとても好きだ。寒くなく風もない。ウツギやヤマブキ、ハギなどの花が咲いているとなおいい。

 富士見台からは鶴脚山、馬頭刈山と暗い森の中のきついアップダウンが続く。ふもとに近づくと高明神社と言うお宮さんがあるが、ここはしばらく火災で焼け跡が残っているだけだった。最後に行ったのはもう15年以上は前になるので、今は再建されているかもしれない。やがて、林道に出たら、左手に少し登ったところにわき水があり、ここでいつもタンクに水を詰め込んで帰ったものだ。これを冷やして飲めばじつにうまかった。コーヒーも焼酎も。さらにくだると軍道という集落に出る。ここで武蔵五日市行きのバスを待つことになる。

 このコースはかなり長くてきついが、昔からとても好きで1人で何度歩いただろうか。いつだったか、軍道のバス停でくたばって座っていたら、通りかかった車が武蔵五日市の駅まで乗せてくれたことがある。若い中学校の先生だった。「えっ、そんなに歩いてきたの?」って驚いていた。こういう親切はいつまでたっても忘れない。いい思い出である。

15.奥多摩 鷹ノ巣山〜富士山、防火帯、石尾根 [私の山歩き]

 以前、石尾根の下り道のことを書いたが、尾根の中程にあるのが鷹ノ巣山(たかのすやま、1737m)だ。この山へ日原から登るコースがある。雲取山に登るコースとしても利用されている。奥多摩駅からバスに乗り、川乗橋を過ぎて、日原鍾乳洞の手前の東日原で下りて、少し歩いた先の民家の間を抜けて、日原川の河原へ下りる。巳ノ戸橋を渡って、大きな岩がごろごろしている間を縫うようにして登り始める。

 やがて道は巳ノ戸沢を右岸に渡って稲村岩という巨岩に向かってジグザグに登る。この岩村岩までが歩き始めて1時間くらい。ここからさらに山頂までひたすら登るばかり。稲村岩尾根と呼ぶこのコースは相当きつい。歩くこと1時間半くらいでちょっとした平坦な場所につく。ヒルメシクイノタワという名前がついている。ここでちょうど昼飯どきになるということか。
 
 ここから30分くらいで山頂だ。山頂とはいえ、鷹ノ巣山は長い石尾根の真ん中あたりに盛り上がった突起である。右に向かえば七ツ石山から雲取山へさらに高度を上げる。こちらは1泊コースなので、われわれはここで昼食をとって、左へ下ることにする。鷹ノ巣山のすばらしいところはなんといっても、急坂を登ってきて山頂に出たときの遮るもののない広大な長めだ。富士山が真正面にそびえている。無風晴天の秋から冬が一番いい。

 私はコッヘルとガスコンロをいつも携帯して、前日に用意した食材で、独特のうどん鍋を作る。生うどん、豚肉、野菜・キノコ類をミソ仕立てやカレールーで煮る。担ぐのは難儀だが、作って食べるのは楽しみである。同行のメンバーもおいしいといって食べてくれる。何年か前の冬の日、妻と二人で鷹ノ巣山に登って、昼食にこのうどん鍋を作って、いざよそって食べようとしたとき、後ろ側に倒れ込むように体のバランスを崩した。そのとき、鍋をひっくりかえして、せっかくのごちそうをそこらにぶちまけてしまった。こういうことはたまにあるものである。山で料理したりするときは、よほどしっかり調理器具を安定させておかなければならない。この日は昼食抜きで下山することになった。とほほ、である。

 鷹ノ巣山の山頂から奥多摩駅方面に石尾根を下る道は、防火帯といって、山火事が延焼しないようにわざと、尾根付近の樹木を取り払ってある。だから、見晴らしもよく歩いていてとても気持ちがいい。春などはゼンマイがあちこちに生えていて、いっぱい収穫したこともある。鷹巣山など山頂をつなぐこの防火帯の道とは別に、山頂を通らない山腹の道が付いていて、疲れたときなどはこの巻き道を歩くと楽だ。

 ちなみに、雲取山から石尾根を下るとき、七ツ石山があって、七ツ石小屋というとても雰囲気のある(というかなんともいいようがないさみしげな)山小屋がある。いまもあるのかしらん? また鷹ノ巣山から下ると、六つ石山がある。こちらはコースから少し戻り気味に登るので、疲れているときはスルーしてしまいがちだが、ここがまたなんいもない、ただのピークだが、なんにもないだけ、静かでとても見晴らしがいい。

14.奥多摩三山 川乗山〜百尋の滝、清流、紅葉 [私の山歩き]

 川苔(乗)山はとても好きな山で、一人でもグループでも何度も行っている。7時46分新宿駅発のホリデー快速に乗れば、奥多摩駅に9時頃着く。駅前からの東日原行きのバスが15分頃出るので、それに乗って川乗橋停留所で下りて、歩き始める。しばらくはアスファルト道だが、細倉橋から登山道に入ってからは渓流沿いの涼しい道が待っている。水がとてもきれいで、ここで川海苔を取っていたのだろうか。やがて百尋の滝に着く。滝へは梯子を下りるなどして川原に出なければならない。こんな見事な滝がこういうところにあるんだね~という感想を誰もが抱くだろう。大雨でしばらくの間、川原に下りられない時期があったが、今はどうだろう?

 滝見物が終わったら、梯子を登り返して、もとの道に戻る。ひと山越えて静かな山道を行くと、小さな沢に出る。ここは水場になっていて、飲料水を補給したり、顔を洗ったりしてひと休みだ。ここから反時計回りに山裾を巻くようにしてしばらく歩くと、頂上直下へいたる森の中の道に入る。ここがまたきつい。クマザサをかき分けながら登ると、頂上がすぐそこの高みに見える坂の下につく。ここは昔茶屋があったところだ。小屋の跡がしばらくは残っていたが、今はどうなっているだろうか。

 小休止してから最後の急登にかかる。秋は急坂の両脇の森の紅葉がとてもきれいだ。頂上はかなりの広さがあるので、見晴らしを楽しみながら昼食をとることができる。この頂上へは、ほかにも本仁田山(ほにたやま)から縦走するコースもある。下りは、南へ舟井戸から大根ノ山ノ神を経て鳩ノ巣駅へ下りる。これが楽しい。普通に考えれば楽しいはずもない単調な見晴らしもきかない森の中の道である。ところが、一人で、ただひたすら歩く、歩く。これが楽しい。いろんなことも考えるし、暗い森の中で白く光るウツギの花が咲いていたり、黄金色のヤマブキの群落があったりもする。でもただ歩くことが嬉しい気分になる。ふもと近くなると、そこらの草むらに腰掛けて、ポットに入れてきた冷えた白ワインを飲む。これがまたいい気分にさせてくれる。

 大根ノ山ノ神で本仁田山からの下り道と合流する。もうしばらくで集落に入り、コンクリート舗装の急な下り坂を下りると鳩の巣駅に着く。このごろは青梅線も展望列車と言うのか、渓谷側を見下ろす窓に向けた縦長のベンチがついた列車が走っている。新宿に着けばまた都会の雑踏が待っている。