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19.親愛なる扇山と君恋温泉 [私の山歩き]

 奥多摩からちょっとだけ外れるが、中央線沿線の扇山というよく通った山がある。中央線終点の高尾から中央本線に乗り継いで、子仏トンネルを抜けると相模湖、藤野、上野原、四方津、梁川と続いて鳥沢駅に着く。鳥沢の先は日本三大奇橋のひとつとして有名な猿橋のある猿橋駅、その先が大月駅である。

 鳥沢駅で降りて、北方へ1時間ほど歩くと梨の木平という扇山のふもとに着く。大月カントリークラブという有名ゴルフ場がある。何度も通うようになってからはタクシーを使うようになり、近年ではバスが週末に運行するようになったのでそれを利用するようになった。そこから扇山山頂までは1時間20分ほどであるから、実にわかりやすい簡単な山である。

 梨の木平から1時間ほど登ると稜線に出る。大久保のコルという鞍部である。扇山は右へ向かう。左へ向かうと大久保山という小高い丘で、その先が百蔵山である。この百蔵山と扇山を縦走することが多いが、今回は扇山だけにしよう。20分ほどなだらかの丘を登るように山頂に近づく。山道は広く気持ちのいいシラビソなど針葉樹の林である。

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 山頂は広場のように広い。遮るもののない南西の空に富士山がそびえている。われわれはここでよく宴会のようなランチを催した。10回以上は登っている。ここから下山するのは犬目の宿である。犬目は甲州街道にある宿場町である。葛飾北斎の富岳三十六景(下)でも有名だ。いまは静かな静かな集落になっている。犬目を経て大野貯水池へと向かう。舗装道路でただひたすら歩くばかりだが、この大野貯水池は冬には多くの渡り鳥が羽根を休めている。さらに歩くと、JR四方津駅に着く。

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 これが普通のコースだが、扇山から犬目に下りないで、途中から右手に折れて、君恋温泉に寄ることが多くなった。君恋温泉の名前のいわれはまだ調べていないが、その名前ほどはロマンチックではない。しかし、実に実にありがたい温泉なのである。森を抜けた畑の中に立つ一軒宿だが見かけは普通の民家である。お湯だけなら500円で入れる。(今はどうか知らない。)ビールを頼むとこんにゃくのミソ田楽を出してくれる。このうまいこと。鉱泉の風呂は2つあるが、お客さんが少ないと1つだけ沸かして、男女が交互に入る。

 宿の前には桜並木があり、春の満開の時期に桜と富士山が桃源郷のような姿を見せてくれる。風呂に入り、酒が入れば、もう歩く気はなくなる。宿の人に頼んで鳥沢からタクシーを呼んでもらって、鳥沢駅へと戻ることになる。まあ、年に1回くらいならこういうぜいたくも良しとしようではないか。

 いつだったか、この宿にストックを忘れたことがあった。電話するとちゃんと取ってあったので、翌週末また1人で同じコースを歩いて、湯に入ってストックを受け取って帰ってきたこともあった。そのときは1人だから四方津まで歩いて、駅前でワンカップを買っていい気持ちで帰ってきた。こんな山歩きもしていたのである。